ホ ー ム | 設立趣旨 | 活 動 | ニューズレター | 加盟学会 | 規 約 |
要 望 書 |
「地域研究」委員会設置に関する要望書日本学術会議 太平洋学術研究連絡委員会・地域学研究専門委員会委員長殿 地域研究学会連絡協議会は「日本における地域研究(エリア・スタディーズ)の発展に寄与するために、お互いに交流し、必要な提言をおこなう機関」として2003年7月に発足しました。現在、17学会が参加していますが、これらの学会が研究対象とする地域は地球上のあらゆる地域をカヴァーするものです。また、各学会会員は特定の地域を研究対象としながら、同時に、歴史学、文学、人類学、政治学、経済学、社会学など主として人文、社会科学の分野に重点を置きつつも、自然地理学や環境学など自然科学の分野に属する研究者にも広がっています。 また、2004年4月には、地域研究に関連する研究・教育組織や社会組織が、地域研究の推進、次世代育成、研究基盤の拡充、社会連携の強化などを目的として「地域研究コンソーシアム」を結成していますが、その参加組織は現在、60の組織(国公私立大学付置研究所・センター、日本貿易振興機構アジア経済研究所、大学院研究科、21世紀COE拠点形成プロジェクト、学会および社会活動組織など)に及んでいます。 このように、近年の日本における地域研究に関する学会や研究・教育機関の発展には注目すべきものがあります。それは、とくに冷戦終結後の世界において民族・宗教紛争が多発しているため、文化や文明の違いによる対立や紛争を解決するための新たな「知」が求められていること。また、通商や情報、金融のレベルでグローバリゼーションが進行するなかで、むしろEUやNAFTA、APECのように新たな規模の「地域」のまとまりが模索され始めていることが作用していると思います。 しかし、このように地域研究が個々の学会や機関のレベルでは急速な発展を遂げてきたにも拘わらず、従来の日本における全般的な学術体制の中では十分にその動向は反映されてきませんでした。 地域研究は、元来、第一次世界大戦期の米国で文化を異にする国々や自文化についての研究として始まり、日本では第二次世界大戦後の新制大学のもとで発展してきましたが、現在では、冷戦終結という新たな現実を分析し、文化・文明の相違による紛争の解決や地域統合の進展による文化摩擦の緩和策の解明など、21世紀の世界の切実な政策課題に挑戦する学際的で、俯瞰的な学問領域として成長してきています。さらに、地球環境の悪化や資源の枯渇による「持続可能な成長」の模索が始まるなかで、従来の人文・社会科学中心の地域研究は、環境学や自然地理学、生態学、農学、水産学、医学などの自然科学とも協力して発展してゆく必要性が高まっています。 このような地域研究の隆盛は、日本学術会議の中では大平洋学術研究連絡委員会の下に設置された地域学研究専門委員会の活動と提言に反映されてきました。その場合の「地域学」には外国を対象とした地域研究(Area Studies)だけでなく、国内の地域計画などを研究するRegional Studiesなども含んだ形で展開されてきました。この専門委員会は、2000年6月26日付けで「地域学の推進の必要性についての提言」をおこなった他、2002年11月9日には「地域学の現状と課題」というテーマでシンポジウムを開催しましたが、このシンポジウムには地域学に関連する56もの学会が協賛しました。その上、2004年9月19日には、シンポジウム「地域学を超えて−知のフロンティアと国際共同研究−」が開催され、活発な議論がたたかわされました。 このように日本学術会議の中でも地域研究に関連する活動が蓄積されてきましたが、2005年10月以降に発足する新たな日本学術会議においては、複合領域に属する新たな「分野別委員会」として「地域研究委員会」を設置してくださるように強く要請します。このような委員会が設置されれば、これまで個々の学会や機関において急速な発展を見せてきた地域研究が、既存の学問分野や機関の壁を超えて交流できるようになるだけでなく、国際的なレベルにおける研究の交流も促進されるものと確信しています。 平成17(2005)年1月31日
アジア政経学会理事長 末廣 昭 |