地域研究コンソーシアム 特別運営委員会議事録
日時:
2005年4月10日(日) 午前9時30分〜正午
場所:
全国都市センターホテル
出席:
黒田(平和環境もやいネット)、大西、高松(ジャパン・プラットフォーム:JPF)、家田(北海道大学スラブ研究センター)、石川、河野、田中(京都大学東南アジア研究所)、寺田(上智大学アジア文化研究所)、飯塚(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)、染田(大阪外国語大学地域文化学科)、赤嶺(名古屋市立大学)、阿部、石井、臼杵、押川、帯谷、山本(地域研究企画交流センター)
配布資料:
「研究・教育機関とNGO/NPOの人材交流」実現へ向けての提案
NGO/NPO活動 人材登録制度について
NGO/NPO活動 人材登録フォーム
人文・社会科学系の「ポスドク」の現状
1.趣旨説明
河野運営委員長より、特別運営委員会開催についての趣旨説明があった。前回の運営委員会において、緊急かつ重要な議案がある場合には、定例の運営委員会とは別に、議案を限定した特別運営委員会を開催することが承認された。前回の運営委員会では、人材交流の必要性を確認したものの、十分に議論できなかった。したがって、今回、同議題を集中的に議論するための特別運営委員会を開催することとなった。議論にあたり、運営委員以外から以下の方々に参加してもらった。黒田(平和環境もやいネット)、高松、石井(社会連携研究会)、田中、赤嶺(教育・次世代育成部会)。
2.資料説明
石井より、配布資料が紹介された。社会連携研究会は、2回の研究会を通じて「研究・教育機関とNGO/NPO の人材交流」を中心に活動することになった。本特別運営委員会においては、提案(資料1)の中に挙げた次の具体案を検討してほしいと要望が出された。(1)NGO/NPO の緊急・開発支援に対応する研究者の人材登録制度を創出すること、(2)および(3)ポスドクや大学院博士後期課程クラスの研究者をNGO/NPOへ短期・長期派遣すること、(4)研究・教育機関におけるNGO/NPOでの活動経験の有効活用を推進すること。提案(資料1)は、運営委員会で承認されれば、加盟組織に呼びかけたい。
3.人材登録制度
石井より資料2、3が紹介された。資料2はホームページに載せることを前提に作成された。作成にあたっては、外務省、JICA、国連がおこなっている人材登録制度を参考とした。運用にあたっては、個人情報の管理方法を協議・確立する必要がある。事務局の設置も必要となろう。運用規定の詳細を詰めていかねばならない。
これに対して、以下の意見が出された。
概要の文章が不明瞭である。主体を明確にし、目的、対象などを書き込む必要がある。現地でやるのか、日本でやるのか。活動内容について明確にした方が、現実味がでてくるのではないか。人材登録フォームから読みとれる情報を、概要に記載すべきではないか。コンソーシアムとしてできることとできないことがあるので、コンソーシアムのポジションを明確にすることが重要である。コンソーシアムは人材交流を媒介する、という立場を明確にするべきである。
NGO/NPO側がこの登録制度をどう利用できるのかを記載すべきである。
若手だけではなくシニアへも道をひらくべきではないか。登録資格はこれでいいのか。「修士号以上、あるいは地域研究の十分な経験のある人」でどうか。
学部生でNGO/NPO活動をおこなっている人は登録できないか。
NGO/NPO側としては学部生に対してアピールができれば望ましいが、人材登録制度はNGO/NPO のプロジェクトの質の向上を目的としているので、専門家の登録を必要としている。学部生は、学部生用に別個の議論をおこないたい。
登録した人を対象にNGO/NPOの活動に関する研修をおこなう。例えば、登録した人にミニ集中講義をしてはどうか。研修に参加した人は参加しなかった人と差別化できないか。このような研修などを通して、登録者と直接接触する機会を作っておきたい。
個人情報の運用については、事務局が設置される法人の制度とすり合わせが必要である。
以上の意見を反映させて、人材登録制度の運用にむけて、概要を書き直し、目的を書き加え、運用規定を詰めることが求められた。
4.NGO/NPOへの人材派遣(短期・長期)
大西より、短期・長期人材派遣についての説明があった。短期派遣については、例えば、ピースウィンズ・ジャパンでは、インド洋地震・津波災害の際に、アチェの専門家を探すことは難しく、専門家の存在は知っていても面識がないために連絡することができなかった。初動支援の段階から、地域情報の不足による過ちをおこさないためにも、専門家に24時間〜7日程度で参加してもらえれば有難い。
長期派遣については、NGO/NPOの海外プロジェクトの質向上のために地域専門家を雇用する可能性について、その予算も含めて検討中である。来年度からの実施に備えるためにも、今年度、既存の予算内でパイロット・プロジェクトができるか検討したい。例えば、JPFは地方自治体職員をピースウィンズ・ジャパンのアチェ支援に派遣する枠組みを整えたが、研究者派遣に応用できないか検討したい。
雇用形態については、完全雇用、業務委託、謝金ベースの協力、ボランティアなどさまざまな形態が考えられる。しかし、危険を伴う海外プロジェクト現場での活動に際しては業務命令権を確立する必要があるため、NGO/NPOが地域専門家を雇用するという形態をとりたい。
NGO/NPOへの派遣に関しても、コンソーシアムの役割とポジショニング(加盟組織間の交流、媒介としての機能)を明記する必要がある。
NGO/NPOへの短期・長期派遣を実現するために積極的に取り組むことが承認された。
5.NGO/NPOO経験と研究のキャリアについて
石井から、提案(資料1)の「(4)研究・教育組織におけるNGO/NPOでの活動経験の有効活用を推進すること」についての説明があった。NGO/NPOへの長期派遣の潜在的対象者は、主に「ポスドク」になるであろう。長期派遣による「ポスドク」のNGO/NPOでの経験が、彼らが研究者としてのキャリアを積むうえで不利になってはならない。例えば、日本学術振興会の特別研究員や助手のポストには年齢制限があるが、このような制度はNGO/NPOで経験を積んだ若手の研究者に不利に働く。このような制限を変えることはできないだろうか。
これに対して、以下の意見が出された。
NGO/NPOでの経験を有利にするような制度を導入することは不可能だが、不利にならないような気運を高めていくことはできる。最近では、NGO/NPOでの経験が就職に際して有利に働くケースが増えている。
コンソーシアムとしては、地域研究教育の一環としてNGO/NPO活動の実践を位置づけているはずである。となると、NGO/NPO経験の有効活用というレベルの話ではなく、活動をとおして初めて新たな地域研究の成果も生まれると考えるべきではないか。
有給・無給を問わず、研究員制度を確立したい。今年度、コンソーシアムで有給の研究員制度ができそうだ。無給の研究員制度を確立し、NGO/NPOでの活動期間も研究員という身分を確保することにより、それを研究実績として認められるようにすることは可能だ。このような制度をコンソーシアムとして持つことができるかどうかを検討する必要がある。
提案(資料1)の「(4)研究・教育組織におけるNGO/NPOでの活動経験の有効活用」という文言は、「相互の人材交流と人材活用」でいいのではないか。
相互の人材交流と人材活用では、NGO/NPOと研究・教育機関が連携できることがたくさんある。例えば、海外研究拠点においてはプロジェクトベースで協力ができる。シエラレオネではブラッドフォード大学とシエラレオネの大学とNGOが協力して事業を行っている。
NGO/NPOが大学に研究(プロジェクト)を委託することはできる。委託プロジェクトのなかで任期つきの助手を雇用することができる。
優秀な人材をいかにプールし、魅力的な研究プロジェクトを実現できるかが大学(私学)の売りとなる。
NGO/NPO活動自体は地域研究としてみとめられるのか。それとも地域研究の研究対象という位置づけなのか。
教育においてNGO/NPOと協力していきたい。実務経験者を大学に教員として派遣できないか。
6.結論
「研究・教育機関とNGO/NPOの人材交流」に向けた提言と人材登録制度については、この運営委員会の議論を踏まえて社会連携研究会が文言を訂正したうえで、加盟組織に対して配布・周知し、活動を開始する。
上記1に加えて、どのような活動が可能なのかを、社会連携研究会と教育・次世代育成部会が協力して検討する。
JPFより、運営委員会に対してJPF評議会にオブザーバー参加するよう要請があり、基本的に了承した。
次回の運営委員会において、社会連携研究会を部会として改組することを検討する。