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地域研究方法論研究会

地域研究方法論部会

地域研究コンソーシアム(JCAS)の地域研究方法論部会は、「現代世界が抱える諸課題に対する学術研究を通じた取り組み」としての地域研究のあり方を検討するとともに、それを個々の研究者の一芸とすることなく継承可能な形で表現するため、地域研究の方法論を言葉によって記述することを目指しています。

2011年度までは地域研究方法論研究会として活動しており、部会メンバーが地域研究に携わる国内の教育・研究機関を訪問する巡回研究会を行い、教育・研究の現場で地域研究に取り組んでいる教職員や学生と情報や意見の交換・共有を行ってきました。その内容は『地域研究』の第12巻第2号(総特集 地域研究方法論)によって公開されています。

2012年度より地域研究方法論研究会は地域研究方法論部会となりました。JCAS加盟組織から集まった複数のJCAS地域研究方法論プロジェクトがそれぞれ研究を進め、部会ではJCAS運営委員および各プロジェクト幹事がプロジェクト間の情報共有や意見交換を行うとともに、公開研究集会や出版を通じた研究成果の発信を進めます。なお、2011年度まで行われていた研究会の活動は、JCAS地域研究方法論プロジェクトの1つである「地域研究の過去と将来」プロジェクトに引き継がれています。(2011年度までの地域研究方法論研究会の活動内容については、地域研究方法論プロジェクトをご覧ください。)

なぜ地域研究の方法論を考えるのか

地域研究とは、1人1人が世界における自分の立ち位置を理解するため、自分が置かれている世界のあり方を現場に即して理解し、そのなかに自分を位置づけて捉えることで、よりよい世界のあり方を構想する学術的な営みです。

今日の世界では、(1)特定の大国の睨みが利かなくなったこともあって外国とうまく付き合うために1つ1つの国について事情を知る必要が生じており、また、(2)ヒトもモノも情報も国境を越えて大きく動くようになったため、一国の国内だけ見るのではなく、国どうしの関係や国の枠を越えたつながりがわからないと理解や解決がしにくい問題が増えています。

社会の現場での研究成果の活用を強く意識して地域研究の方法を検討することは、個々の現場に根ざして事実を積み上げることで全体像を描こうとする地域研究の方法を追究することでもあります。その意味で、地域研究の方法論を考えることは、地域研究という学術研究の一分野にとってだけでなく、学術研究全体や社会全体にとっても大きな意義があります。

JCAS地域研究方法論プロジェクト

地域研究方法論部会では、さまざまな角度から地域研究の方法論を検討するため、JCASの各加盟組織(または加盟組織に所属する個人・グループ)が行っている地域研究の方法論に関する研究活動を募集し、「JCAS地域研究方法論プロジェクト」として登録しています。

地域研究方法論部会は、JCAS地域研究方法論プロジェクトのあいだの調整・促進役を果たすことで、JCAS加盟組織が行う地域研究方法論についての研究活動どうしで交流を深め、知識や経験を共有すると同時に、研究集会の開催や報告書の刊行などを通じて、地域研究における方法論のあり方をJCASとして発信していくことを目指しています。

地域研究方法論部会では、JCAS地域研究方法論プロジェクトを随時募集しています。詳しくは「JCAS地域研究方法論プロジェクト募集」のページをご覧ください。これまでに登録されたJCAS地域研究方法論プロジェクトには以下のものがあります。

1.「地域研究の過去と将来」プロジェクト
2011年度までの地域研究方法論研究会の活動を引き継ぎ、域研究に携わる国内の大学や研究所・センターを訪問する「巡回研究会」を継続する。引き続き大学院教育における地域研究のあり方について具体的な事例に即して検討を続けるとともに、(1)多様な専門性を持つ研究者が協働する仕組みとしての地域研究の歩みを踏まえた地域研究の意義と方法、(2)研究者以外の専門家・実務者による成果の活用を意識した地域研究の方法、(3)自身が社会生活する存在としての地域研究者の生活と研究の両立などの諸課題についての検討を通じて、学術研究と社会のそれぞれにおける地域研究(者)の位置づけを考える。幹事は山本博之(京都大学地域研究統合情報センター)。

2.「日本発・地域研究」プロジェクト
地域研究をすすめるうえでは現地の研究者との連携が不可欠だが、現地の研究者は地域研究者としてのアイデンティティを持っていない場合がほとんどである。これは地域研究をする側とされる側が明確に構造化されていた時代の名残であるが、地域研究の対象地域において「地域研究」という研究分野が確立されにくい状況が存在していることは、翻って日本における地域研究の存在意義に跳ね返ってきそうな問題である。本プロジェクトでは、地域研究者と調査地域の関係の間に横たわる様々な問題をとりあげ、「日本発・地域研究」のあり方を模索する。幹事は宮原曉(大阪大学グローバルコラボレーションセンター)。

3.「災厄と記憶の地域研究」プロジェクト
武力紛争は一つの社会の中に加害者と被害者を生み出すことで社会の亀裂を固定化し、紛争以前の社会と紛争後の社会のあいだに断絶をもたらす。また、大規模な自然災害は、記録や記憶のよりどころとなる博物館や文書館、景観、文化・芸能の担い手に大きなダメージを与え、被災前の社会と被災後の社会のあいだに断絶をもたらす。他方で、断絶した経験や、紛争前と紛争後、被災前と被災後の歴史を結びなおし、社会の連続性を回復させるのも人びとの記憶である。本プロジェクトでは、社会全体に大きな影響を及ぼした災厄が紛争終結後や復興過程の社会の中でどのように記録され、また記憶されるのかを分析する基礎的な枠組をつくる。あわせて、人文社会系の地域研究者が自身の専門性を活用して紛争後社会や被災後社会の復興過程にコミットする方法について検討する。幹事は西芳実(京都大学地域研究統合情報センター)。

4.「通史を書かない地域研究」プロジェクト
パレスチナ/イスラエル研究者業界には、紛争地域であることを反映して、パレスチナ・アラブ研究者とイスラエル・ユダヤ研究者が疎遠になりがちという特徴がある。ただし、現在ではかつてのような対立関係はあまり見られず、素朴なレベルからの両者の接近・懇親が必要とされている。また、パレスチナ/イスラエル地域の特徴として、シオニストの歴史観とパレスチナ人の歴史観のように、研究対象やディシプリンによって地域や歴史の見え方が根本的に異なる。このため、何らかの枠に研究・研究者をまとめ込むことは不可能であり、そのような試みは矛盾が動態的に満ちた地域の特徴を捉え損ねることになりかねない。そこで、地域研究者は地域への関心によって集まっていることに改めて目を向け、求められているものは刺激であると敢えて割り切り、地域や地域研究がもたらす刺激をもとに共同研究を組み立てる。幹事は錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)および鶴見太郎(立教大学文学部/日本学術振興会特別研究員)。

共同研究プロジェクトの公募

地域研究方法論部会では、京都大学地域研究統合情報センターとの共催により、地域研究の方法論に関する共同研究プロジェクトを募集しています。採択された共同研究プロジェクトはJCAS地域研究方法論プロジェクトとして登録され、研究費が支援されます。

2013年度の実施課題として、地域研究の方法論に関する共同研究プロジェクトを募集しています。募集の詳細については、地域研究方法論共同研究プロジェクト公募のページをご覧ください。

活動の記録と刊行物

巡回研究会

2010.11.05 シンポジウム「実践学知としての地域研究」[詳細情報]
2009.12.19 大阪大学ワークショップ[詳細情報]
2009.07.02 東京大学ワークショップ[詳細情報]
2009.06.26 上智大学ワークショップ[詳細情報]
2009.02.10 早稲田大学ワークショップ[詳細情報]
2008.11.14 東京大学ワークショップ[詳細情報]

地域研究とキャリアパス

2011.12.10-
2012.2.19
連続ワークショップ「地域研究とキャリアパス―地域研究者の社会連携を目指して」
社会連携部会キャリアデザイン・プロジェクトの主催により、2011年12月から2012年2月にかけて、大阪大学、九州大学[詳細情報]、北海道大学[詳細情報]、京都大学[詳細情報]で事前ワークショップを開催し、各会場の参加者を交えた総括のワークショップ[詳細情報]を2012年2月19日に上智大学で開催した。
ワークショップでは、①地域研究(者)の存在を社会一般に周知できるような検定・資格(たとえば「地域研究士」)の制定、②所属先がない研究者に研究費申請などの身分や資格を保証する研究員制度(たとえば「JCAS研究員」)の導入、③大学内外の活発な人材交流のためのキャリアデザインについて情報を共有する機会の創設、④若手研究者のキャリアパスに関する国際間比較共同研究の企画・実施、⑤地域研究の成果を活かした地域密着型のシンポジウムの開催について提案があった。これらの課題については、2012年度よりJCAS運営委員会に置かれた地域研究将来構想ワーキンググループで検討されることになった。
ワークショップの内容はJCASコラボレーション・シリーズ第5号として刊行された。
2011.02.20 ワークショップ「キャリア・パスとしての社会貢献?-若手地域研究者の現状と社会連携の可能性」
社会連携部会キャリアデザイン研究会(現キャリアデザイン・プロジェクト)の主催により、2011年2月に上智大学でワークショップ「キャリア・パスとしての社会貢献?-若手地域研究者の現状と社会連携の可能性」[詳細情報]を開催した。
ワークショップの内容はJCASコラボレーション・シリーズ第2号として刊行された。

関連刊行物

2012.03 「総特集 地域研究方法論」(『地域研究』第12巻第2号)
巡回研究会を中心とする地域研究方法論研究会(現・地域研究方法論部会)による研究成果の中間報告として2012年3月に刊行された特集企画。[詳細目次]
2012.03 『地域研究とキャリアパス―地域研究者の社会連携を目指して』(JCASコラボレーション・シリーズ5)
2012年2月に社会連携部会キャリアデザイン・プロジェクトの主催で実施した連続ワークショップ「地域研究とキャリアパス―地域研究者の社会連携を目指して」[詳細情報1][詳細情報2][詳細情報3][詳細情報4]の報告書。[詳細目次]
2011.08 『キャリア・パスとしての社会貢献?―若手地域研究者の現状と社会連携の可能性』(JCASコラボレーション・シリーズ2)
2011年2月に社会連携部会キャリアデザイン研究会(現キャリアデザイン・プロジェクト)が実施したワークショップ「キャリア・パスとしての社会貢献?―若手地域研究者の現状と社会連携の可能性」[詳細情報]の報告書。[詳細目次]

地域研究方法論部会の構成(2012-2013年度)

部会長
 山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)

部会員(JCAS運営委員)
 宮原曉(大阪大学グローバルコラボレーションセンター・准教授)
 西芳実(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
 錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・助教)

部会員(JCAS地域研究方法論プロジェクト幹事)
 鶴見太郎(日本学術振興会・特別研究員/立教大学文学部)

関連URL

地域研究方法論プロジェクト http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/areastudies/
(2011年度までの地域研究方法論研究会の活動内容の記録。京都大学地域研究統合情報センター・地域研究方法論プロジェクトとの共催による研究プロジェクト。)