JCAS:TOPページ > 共同企画講義「最先端の地域研究者によるエスノグラフィ論特別講義」
企画責任者の氏名(所属先・職名)
中川理(大阪大学グローバルコラボレーションセンター・特任准教授)
宮原暁(大阪大学グローバルコラボレーションセンター・准教授)
企画の概要
本企画は、JCASのネットワークと人材を活用して、地域研究の重要な技法のひとつであるエスノグラフィ(民族誌)についての出張講義を、大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)の「フィールドワーク関連科目群」の一環として実施することを目的とする。
フィールドワークにもとづき対象地域の人々の生のあり方を記述するエスノグラフィは、住民の視点を理解するために欠かせない、地域研究の有力な方法論であり続けてきた。しかし、1980年代の民族誌批判においてこれまでの実践に対する反省がなされたものの、その後、変わりゆく世界についてのエスノグラフィを「いかに書くのか」についての考察がなされてきたとは言いがたい。ところが、エスノグラフィを志す大学院生レベルの学生にとって、「いかに書くのか」は非常に頭を悩ます現実的問題である。現状ではこの問題について考察する講義やセミナーが十分に組織化されていないため、学生たちは各自、先行する著作や指導教員からいわば行き当たりばったりに学びつつ書いていくことをせまられている。この状況を改善し、より体系的な学習を可能とするために、最先端の地域研究者による「エスノグラフィ論特別講義」を実施したい。
同科目は孤立した科目ではなく、一貫した教育の一部として構想されている。GLOCOLは、全学の大学院生に向けて「フィールドワーク関連科目群」を整備してきた。これまで、参与観察や聞き取りといった技法に通じるための科目だけでなく、フィールドワークがはらむ倫理的問題についての科目を設置し、大学院生が特定の研究分野の垣根を越えてフィールドワークを学ぶための基礎をかためた。「エスノグラフィ論特別講義」は、この科目群を補完するものであり、フィールドワークの成果をどのように記述するかという問題について考えたい大学院生のために設置を予定している。
しかし、エスノグラフィを「いかに書くか」を効率よく教育するための方法は、先行する試みが多くないだけに十分な事前検討を必要とする。また、特定のディシプリンの視点に限定されず広くアイデアを集め練り上げていく必要がある。そのために、2011年度はJCASより協力者を募り、検討会議をとおして講義の企画および講師の選定を実施する。平行して、GLOCOLにおいて開講手続きをすすめ、2012年度後期から開講することを予定している。また、他大学院との交流を促すための単位互換制度の導入を模索する。
同企画は、GLOCOLというフィールドワーク教育をその目的のひとつとする組織をハブとして、部局や専門の垣根を越えて大学院レベルのフィールドワーク教育を発展させるという点で革新的である。また大阪大学の教育改革をJCASとの連携によって行うことで大学の垣根を越えた地域研究教育のネットワークを強化するという点でも新しい試みであるといえる。